スキルの居場所



入社希望で寄せられた履歴書を見ると、ほとんどの人が何かしらの資格を持っている



中には記載欄に書ききれないほど、別紙に続くような人もいる



スゴイ!



どれだけ勉強時間を費やしてきたのだろう、聞いたこともない新しい資格を見かけたり、感心しっぱなしの僕



そんな僕は、よくよく考えてみれば、運転免許以外の資格は何ひとつ持っていない



試験を受けたこともない



普通に生きてきて大人になり、今に至るまで資格試験を受ける機会が一度もなかった自分に今更ながらちょっと驚く



おまけに一度も表彰状なるものをもらったことがない



しかも、これといって不自由していないからまた驚きだ



何の資格もない僕だがスタッフたちが優秀なお陰で会社は健在だ





そんな中、スタッフに興味深い男性がいる



30代半ばで、背が高くスラっとした体形で爽やかな雰囲気



サービス店のフロント業務的なことをしている彼は笑顔が素敵で空気感もいい



しかし極端な会話のせいで、お客様や関係業者からの賛否がある



「○○さん、さすが日本一です」とか、「そんなアイディア誰も思いつかないですよ、○○さん最高です」など誰彼かまわず、場面も考えず相手が恥かしくなるほどに褒めちぎる



そのコミュニケーション方法は「人によっては気分を悪くするからやめた方がいい」などと他のスタッフたちから注意されても彼から改善の兆しは見えない



しかも自分が担当するお客様ならともかく、他のスタッフが築き上げた信頼関係の中に割り込んで悪気なく褒めていくのだからやられた方はたまったものではない



個人的には嫌いなタイプじゃないが、やり過ぎな点も多いので僕もかなり注意した



コミュニケーション以外の注意点は話に耳を傾けて改善してくれるのだが、この注意にだけは全く聞く耳を持たない



本人には全くと言っていいほど悪意がないからつける薬がない



とにかく彼と揉めるスタッフが日増しに増えているのが悩みの種だ






そんな彼の履歴書には『コミュニケーション検定上級取得』と書いてあった



資格ってなんだろう...という疑問が頭の隅に残る



今までの成功体験の事例が頭にこびりついて身動きがとれないのかな...



今日も会社のパーテーションの向こう側で誰かと揉めている



お客様は勿論だけど、スタッフ同士こそ本物のコミュニケーションが必要なんだよ



みんなとの関係も上手く築いて欲しい





僕だけが知る彼の複雑な家庭環境





もし都合が良ければ、今日一杯付き合わないか?



「皆と上手くやれよ」なんて言う気はないさ



ただ飲みながら少しずつ何かを洗い流していこうぜ




ギターを弾く二人