中学になると幾つかの小学校が合流する
中学一年生の時だけ同じクラスになった“マモチュー”
名前はマモル。出会ったときからすでに “マモチュー” と呼ばれていた
なぜマモチューなのか理由を聞いたことはなかったが、当時のあだ名なんてそんなものだ
人としてネジが壊れかけているマモチューは、デリケートな女子のココロに土足で入り込み、失礼極まりない発言をする
何度文句を言われてもニヤニヤしてまた踏み込んでいくセンセーショナルな神経の持ち主
そしてなぜか僕に寄って来る。僕もそんなヤツに興味がある
なぜならマモチューには多感な男子中学生を誘惑するアイテムが揃っている
流入元は高校生と社会人の兄二人から
CD、マンガ、ゲーム、Hな本…当時の少年が喰いつくヤンチャな変形ズボン
マモチューはいつも少し変な匂いがしたがそれを凌駕するドキドキを僕にくれる
背丈も似ていたので、不良の憧れ“変形ズボン”を僕にくれた
早速僕は意気揚々とそれを履いて学校へ行く。何人か似たような校則違反の変形ズボンで登校していた
登校時、僕と目が合うとマモは「いいぜその服」と言わんばかりに笑顔で親指を立てる
ある日突然、学校で抜き打ちの服装検査が行われた
生活指導の先生から「次の授業が始まる前にやるから制服に着替ておけ」との号令がかかる
“変形ズボン組”は数人いたので「みんなで渡れば怖くない」の如く、臆せず変形ズボンで検査を受けた
しかし甘かった…
順番が早い僕にはいきなり平手打ちが飛んできた
そして生活指導員の先生に「今すぐ脱げ!!」と大声で怒鳴られその場でズボンを脱ぎ、ズボンはあっけなく没収
女子も見ているのに恥ずかしすぎる…
そして運動着に着替えてその場に戻ると、すかさずもう一発飛んできた
痛む頬を押さえ周囲の変形ズボン野郎やマモを見ると、みんないつのまにか標準の制服ズボンに変わってた
みんなしっかり標準ズボンを学校のロッカーに常備していたようだ。なんと僕はマヌケなんだろう?“変形ズボン組”の用意周到さは真似できなかった
マモは「お前バカだな~、しかもみんなの前でパンツ一丁になるとは大胆ですな~♪」と憎まれ口を叩き、親指をたてながら極上の笑顔を置いて行った
何か言い返したいところだがビンタで切れた口が痛くてそれどころじゃなかった
その後もマモチューは相変わらずだった
クラスの女子に変な事を言って女子全員から無視されたり、「学校が終わったら家族でナイタースキーに行く」という友人の話を聞きつけ、誘われてもいないのに同乗し、学生服のままでナイタースキーを滑ったりと本物のバカだった
中学卒業以降マモチューとは会っていない
大人になり聞いた噂では警察官になったとか…
中学時代の残像で何なのだが、ヤツにそんな仕事が勤まるのか?と心配になった
しかも今は警察官を辞めて数年間海外を放浪し現在は養蜂家になったという
大人になっても行動パターンが見えないマモチュー
いろんな意味で先鋭的なチャレンジャー
君のぶっ飛んだ青春時代が懐かしい
いつか会う機会があったらあの頃のように最高の笑顔で親指を立ててくれ