一学期日最終日、娘から呼び出しの電話がかかってきた
「パパ迎えに来て~」
たまたまその日は自宅にいたので娘のお助けコールにすっ飛んで行った
なるほどそういうわけか…
蔓がめいいっぱい育った威勢の良いあさがおと共に校門前で立ち尽くす娘の姿を発見
学校の授業で育てたあさがおは鉢の中で窮屈そうに伸び盛っている
毎日、水やりをし観察日記をつけ丁寧に育てたらしい
「夏休み中も毎日早起きをして水やりをするんだ!」と張り切っている
妻と娘達が僕の実家に帰郷する4泊5日の間、僕があさがおの管理をするというミッション
娘から重大な任務を課された
出がけの直前まで「絶対お願いね!朝の涼しいうちに水をあげてね。あと、夕方涼しくなってからだからね!じょうろの線のとこまで水入れてね!!」
じょうろにはしっかりと、マッキーでラインが引かれている
いつの間に!?
めんどくさがりの娘がこんなに段取り良く事を進めるとは
責任感は新たなスペックを宿すようだ
数日後事件は起きた
いや事件を起こした
あさがおミッション3日目のこと、朝はしっかり水やりをした。
しかし、急な仕事が入りその日は家に帰れなくなった。立て込んでいたこともあり、朝顔の事をすっかり忘れてしまったのだ
仕事を済ませ帰宅したのは5日目の朝…
家に近づくにつれ、ようやく思い出した朝顔と嫌な予感に心臓が痛くなった
まずい、まずい…
葉は黄色く縮み、くしゃっと全体のボリュームがなくなった無残な朝顔が玄関で僕を待っていた
胸が苦しい。朝顔と娘には申し訳ないがどんな言い訳をすればいいか考えている自分がいる
とにかく元気にする方法を検索し肥料と水を足し、嘘の仕事を妻に伝え帰ってくる家族とのすれ違いを画策した
その日の夜ビジネスホテルで過ごした僕は娘からの電話を避けるため携帯の電源を切り多めに酒を飲んで寝た
次の日帰ると娘からだけでなく妻からもあらぬ疑いをかけられ散々な数日間を過ごした
それから毎年、朝顔を見るたびカイジのように「ざわざわ」している