禁煙をして数年が経つ
いまでも時々吸いたくなる
でもタバコは二度と吸えない
娘たちに約束したから…
本当は止めたくなかった
世の中の喫煙者に対する風当たりが強すぎるのも嫌だったし、何より単純に吸いたかったから
だけど止めなくてはならない流れを自ら作ってしまった
ある日、喉の調子が悪く「今日タバコ吸い過ぎたかな」と夕飯の時に何気なく言ったことがキッカケで、そこから家族の会話は一気にタバコの話になり、禁煙するべきだという流れになってしまった
1対4の勢力図
僕はあらゆる角度から反論、論破を試みた
「喫煙者が減っているのに肺がん患者は増えた」だの「とある研究で喫煙者の方がアルツハイマーになりにくいらしい」などゴチャゴチャと言ってみたもののみんな冷めた目で見ている
もとからタバコに否定的な妻は”ざまーみろ”と言わんばかりにニヤニヤしている
妻には何度か禁煙を促されていたが、コレに関しては聞く耳を持たず「NO」と言い続けてきた
タバコを吸わない妻としては迷惑でしかないたいから当然と言えば当然なのだが、僕の娘愛をテコの原理に使う態度にムカムカしてきた
そこで今度は「タバコが唯一の楽しみなんだ」と情に訴えることを試みたが、やはりみんな白けている
長女から「健康のためにやめて」次女からは「もし私が将来吸ったら止めるでしょ?」とか三女からは「男らしくないなぁ、残念な男だよ」と言われてしまい論破どころじゃなくなる
そこへ、まるで裁判長のような立ち位置から「三人のパパ愛を裏切れないね」と僕の急所を突いてくる
あえて議論には参加せず、僕対娘たちの構図を作り上げる妻のオフェンス&ディフェンス能力
妻の言葉を待って反撃するつもりだったが、無言の攻撃に突破する隙間がなくなった
「わかった、そこまで言うならパパは止める!その代わり今残っているタバコは吸わせてくれ」と交渉したところOKが出たので泣く泣く手を打った
しかし簡単には止められない…七本残っていたタバコに何箱か買い足してちょびちょび補給して吸っていた
二週間くらいかけて徐々にフェードアウトし禁煙を達成する予定
そんなある日の夜、夕飯を終えタバコを吸うため外に出る
そこへ次女がやってきて「あと残り何本なの?一箱って20本だよね?そろそろ終わるはずでしょ?」と
僕は「少し吸って消してまた吸うから一本で何回も吸えるんだ」虚偽の説明をした
すると次女が「これ何?」とゴミ箱の奥に捨てたはずのタバコの空箱を見つけ、僕に突き付ける
今持っているタバコの本数もチェックされ完全にアウト
午後8時、虚偽報告、偽造罪、隠蔽行為で現行犯逮捕
所持品を全部捨てられあっけなく終了
最後のタバコの味が喫煙人生で一番無味だった