心地よい喧騒のなかを通り抜けるように流れる笛の音
日頃の鬱屈を吹き飛ばすかのような太鼓の響き
祭りとは夜に華が咲く日だと言わんばかりの熱気を帯びている
イカ焼き、たこ焼き、りんご飴、型抜き、射撃に祭りくじ、焼きそば、綿あめ、チョコバナナ…
美味しそうな匂いと、シロップの香り、アルコールの匂いがお祭りらしさを演出する
子供も大人もみんなが楽しみに待ちわびるお祭り
僕は子どもの頃からお祭りが嫌いだった
正確に言えばうまく馴染めなかったから「嫌い」と位置付けることで自分を納得させていた
友達との会話でわざと祭りに興味が無いようなニュアンスで話してしまったり、みんなの盛り上がりに少し出遅れるとその場のノリというものにうまく乗っかれない妙な癖があった
だけど本当は素直に参加し楽しみたい、内心はワクワクしていた
小学生の時の秋祭り、みんなはハッピを着て「わっしょい!わっしょい!」と笑顔で神輿を担ぐ
流れにうまく乗れない僕は神輿に片手だけを添え、たいして声も出さずに今でいう ”クール” な素振りをかます
そしてバカみたいな強がりをしたまま、夢のような三日間のお祭りが終わっていく
数日後、祭りの余韻を忘れられない僕は、お客さん用の和室にこもり、お客さん用の座布団を数枚重ねて「わっしょい!わっしょい!」と神輿の代わりに持ち上げて一人盛り上がる
不完全燃焼だった気持ちを一気に放出し、ハッキリとした声で「わっしょい!わっしょい!」と声を出しスカッとする
妄想の祭りで盛り上がっているその時、ガラッと和室のふすまが開き、ひとり神輿を姉と姉の友達に見られた
「何やってんの!?」と姉に言われ、静止する僕
内臓がギュッと縮まる瞬間
姉の友達の弟は、僕の同級生……
姉の友達は「おお、ひとり祭りじゃん!」と大爆笑
次の日から僕に降りかかった災難は言うまでもない
「ニセ祭り嫌い」が「本物の祭り嫌い」になった和室での出来事だった